「AIの提案を疑える人」は、現場で20年やってきた人のこと
- 清彦 山崎
- 3 時間前
- 読了時間: 6分

「AIに詳しい人」を探しても、うまくいかない理由
「AIを入れたいんだけど、うちみたいな会社でも使えるのかな」——越谷や埼玉東部の経営者の方から、こういう相談をよくいただきます。そのとき多くの方が、まず「AIに詳しい人はどこにいる?」と探し始めます。でも、たいていそこでつまずきます。
理由はシンプルです。AIは、あなたの会社のことを何も知らないからです。
私たちは、AIのことを「会社固有の知識を持たない、優秀な新入社員」だと考えています。地頭はいい。言葉づかいも丁寧。計算も速い。でも、あなたの現場で何が起きているかは知りません。だから、どこかで拾ってきたような平均的で当たり障りのない答えしか返せない。よそ行きの言葉は上手でも、あなたの会社の“正解”は持っていないのです。
つまり、本当に必要なのは「AIに詳しい人」ではありません。AIに教え込む側の人間——「自分の仕事の正解を知っている人」です。それは多くの場合、その現場で20年やってきた人のことです。
現場には、AIが知らない“言葉”がある
具体的な話をします。
以前、ある運送倉庫の会社さんで、採用向けのショート動画を撮らせていただきました。撮影中、現場でフォークリフトに乗っている方に、雑談でこう聞いてみたんです。「フォークマンって、どんな存在だと思いますか?」と。
返ってきた答えが忘れられません。「フォークマンは、空間デザイナーだ」。
どこに、何を、どういう順で積むか。先に入れた荷物を先に出せるように、頭の中で倉庫まるごとを設計している。ただフォークリフトを運転しているのではなく、空間を組み立てている——だから空間デザイナーだ、と。この方は現場歴が長く、新しく入った人の先生役も務めていました。長くやってきたからこそ、自分の仕事をこう言い切れる。
この「フォークマンは空間デザイナー」という言葉は、AIには絶対に出せません。ネットのどこにも書いていないからです。検索しても出てこない。生成AIに聞いても出てこない。なぜなら、それは現場で積み上げた経験の中にしかない言葉だからです。
そして、これこそが、その会社の“正解”です。マニュアルにも求人票にも載っていない、でも仕事の質を決めている核心。AIが平均値しか返せないのは、こういう言葉を持っていないからなんです。
「調べ込む」という当たり前が、実は武器になる
もうひとつ、別の例を。
ある会社さんのサービス紹介映像を制作したとき、私は企画の段階から、その業界の動向・最新機種・仕組み・何がすごいのかを、徹底的に調べ込みました。撮影や編集に入る前の話です。私にとっては、これは当たり前のこと。映像をつくる人間が、相手の業界を知らずにいい絵は撮れませんから。
この仕事は、費用を抑えたいというご要望もあり、企画・撮影・照明・音声・編集・YouTubeチャンネルの開設とアップロードまで、私が一人で、2日で回しました。あとでお客様からいただいたメールに、こう書かれていました。「まるで大手CM制作会社のプロが数人でチームを組んで作ったような完成度です」。
うれしかったのは、安さをほめられたのではなかったことです。ほめていただいたのは、「先に調べ込んで、段取りで一人分をチームにしたこと」でした。
AIもまったく同じです。丸投げすれば、平均値が返るだけ。でも、会社の知識を先に“調べ込んで”教え込めば、いい答えが返ってくる。手間をかけて相手を知るという当たり前が、実はいちばんの武器になるんです。
「丸投げ」と「教え込む」は、まったく違う
ここで一度、はっきり分けておきたいことがあります。AI活用には「丸投げ」と「教え込む」という、まったく違う二つのやり方があるということです。
丸投げは、AIに「いい感じにやっておいて」とお願いすること。ラクですが、返ってくるのは、どこの会社にも当てはまる無難な答えです。あなたの会社らしさは消え、平均値に均されます。最初は便利に感じても、だんだん「なんか違うな」が積もっていく。AI導入で失敗したという声の多くは、この丸投げが原因です。
一方の「教え込む」は、手間がかかります。あなたの会社の判断基準、言葉づかい、これまでの経験を、AIに一つずつ渡していく作業です。でも、その手間の分だけ、AIは“あなたの会社の新入社員”に育っていきます。フォークマンを空間デザイナーと呼べる感覚を、AIにも持たせていくイメージです。
私たちがやりたいのは、後者です。ラクな丸投げを売るのではなく、あなたの会社の正解を一緒に言葉にして、AIに教え込む。遠回りに見えて、これがいちばん失敗しない道だと考えています。
現場を見てきたから、言葉にできる
なぜYMMがこの話をできるのか。それは、私自身が映像制作で20年以上、いろいろな現場に入って、そこで働く人の“当たり前”を外から見てきたからです。
先ほどの倉庫でも、フォークマンの話だけではありませんでした。トラックは、車体と同じくらいの金額が荷台の設備にかかることがあると知りました。その高価なトラックを、毎回ていねいに掃除しているスタッフの方がいて、胸が熱くなったのを覚えています。取材をしなければ、絶対に気づけない現場の誇りです。
私は高校の模擬面接官も4年続けています。映像も、面接も、根っこは同じ。相手の話をよく聞いて、その人にしか出せない良さを見つけることです。この“聞いて、言葉にする”という仕事を、ずっとやってきました。だからこそ、AIに何を教え込めばいいかも、見えるのだと思います。
だからYMMがやっているのは「知識の蒸留」です
私たちのAI活用の本質は、派手な最新機能を追いかけることではありません。会社の中にある“正解”——ベテランの頭の中にしかない判断や言葉を、AIに移し替えること。これを私たちは「知識の蒸留」と呼んでいます。
その考え方を形にしたのが、FAQシステム ExpertSYS(エキスパートシステム) です。価格は 660,000円の売り切り型(2年目以降の保守は月5万円)。ベテランの答えを、文章だけでなく動画つきで登録できます。しかも、使いながらナレッジを足していくことで、どんどん精度が上がっていく仕組みです。
完全におまかせの自動AIではなく、「人が決めた正解をナレッジから引き出す」タイプなので、とんちんかんな間違いが起きにくいのも特長です。技能の承継、機械の使い方マニュアル、就業ルールの案内、お客様対応の窓口BOT——「今は頭の中にしかない正解」を、会社の資産として残せます。売り切り型なので、補助金と相性が出るケースもあります(要件は公募回ごとに変わるので、必ず公募要領での確認が要ります)。
最後に
AIの提案を、うのみにする人と、疑える人がいます。疑えるのは、AIに詳しい人ではありません。現場で20年やってきた、自分の仕事の正解を知っている人です。
私たちがお手伝いしているのは、その“疑える力”を会社の資産に変えることです。AIを入れること自体が目的ではありません。あなたの会社の“正解”を一緒に見つけて、それをAIに覚えさせる。順番はいつもこうです。
「うちにAIって関係あるのかな」と思ったら、まず相談してください。売り込みはしません。あなたの会社の“当たり前”を、一度いっしょに外から眺めてみるところから始めましょう。




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