5,500組の中から250組に。ハッカソン「Built with Claude: Japan 2026」で私が作っているもの

通知が来たのは10月30日の夜でした
「選考を通過しました」。短いメールでしたが、何度か読み返しました。
AnthropicとCerebral Valleyが主催するハッカソン「Built with Claude: Japan 2026」。11月2日12時から11月10日14時まで、完全オンラインで開催される8日間の開発イベントです。参加枠は250人。そこに5,500を超える応募があったと聞いています。倍率にして20倍以上。越谷の小さな映像屋のおやじが、その250人の一人に入りました。
応募したのは締切当日の10月26日。参加を決めたのは、そのわずか9日前の10月17日です。「Claude Codeのハッカソンがあるらしいけど、うちの手持ちで入賞できそうなネタってあるかな」。Claudeにそう相談したところから、この話は始まりました。
この記事では、なぜ参加を決めたのか、何を作っているのか、そしてそれが越谷や埼玉の中小企業にとってどんな意味があるのか、を書いていきます。ハッカソンの結果はまだ出ていません。でも、作っているものの中身は、結果に関係なく伝えておきたいんです。
最初に出そうとしたのは、まったく別のものでした
10月17日にClaudeへ相談したとき、候補に挙がったのは「AI経理」のWeb版でした。すでに2社に導入している、社長がClaude Codeを使って経理を回す仕組み。これをブラウザから使える形にして、ハッカソンで骨格を作ってしまおう。そんな計画でした。
でも、応募締切の10月26日に考えが変わりました。
きっかけは「審査員の目で見たら、これは強いのか」という問いです。AI経理は便利ですが、AIの使い方としては「社長とAIが一対一で話す」だけ。ハッカソンの公式テーマには「多くの人を阻んできた壁を取り払う」という言葉がありました。壁を取り払うなら、もっと多くの人が関わる仕組みのほうがいい。
そこで思い出したのが、私がずっと抱えていた2つの「困った」です。
一つは、地域のお店に「売るものはあるのに、売り方がわからない」人がたくさんいること。ネットショップも決済も、道具はいくらでもあります。足りないのは道具ではなく、設定してくれる人です。
もう一つは、「働きたいのに、時間が決められない」人がいること。子どもの予定、家族の都合。シフトが組めないから、パートにも入れない。でも、空いた時間に自分で考えて動くことならできる、という人は確実にいます。
この2つを、一つの仕組みで同時に解けないか。Claudeと話しながら、その日のうちに応募文を書き直しました。
作っているのは「八百ビズ」という仕組みです
名前は八百屋から取りました。八百屋の「八百」は「何でも扱う」という意味。地域の商いを何でも扱う、だから八百ビズです。
仕組みはこうです。登場するのは、お店の店主と、地域に住む主婦のパートナー。この二人をClaudeがつなぎます。
パートナーがお店に行き、店主の話を聞く。スマホの録音ボタンを押すだけ
話した言葉が、その場で文字になる
棚の商品をスマホで撮る
送信すると、Claudeが商品名・紹介文などを数パターン起こしてくれる
店主は画面を見て「いいね」と言ってOKを押すだけ。すぐ公開
商品ページにはシェアボタンとQRコード。店頭にもSNSにも、そのまま出せる
お客さんは商品ページから購入。決済はお店が持たなくていい。八百ビズが肩代わりする
売れたら、店主・八百ビズ・パートナーの取り分が明細に自動で並ぶ
店主は、ITを一切触りません。しゃべって、うなずいて、OKを押すだけ。パートナーは、AIの知識がなくていい。録音ボタンを押して、写真を撮って、送るだけです。
「決済をお店が持たなくていい」のところは、過去の失敗から来ています。以前、お店ごとに決済サービスの設定をしてもらおうとして、講習を何度やっても定着しなかったことがありました。道具を渡しても、使えるようにはならない。だから決済はこちらが持つ、と決めました。
最初の相手は、越谷で地域の作り手の商品を集めているセレクトショップです。地元で頑張っているお店の商品が並んでいるのに、売り方で困っている。八百ビズの一社目は、このお店から始めます。
なお、ハッカソンに出す版では、アプリの中でお金は動かしません。パートナーは雇用ではなく、業務委託の成果報酬型として設計しています。この整理も、Claudeと相談しながら決めたことの一つです。
100億円企業を1社より、1億円企業を100社
国は「100億円企業を作る」と言っています。それも大事でしょう。でも、越谷に住んで20年以上商売をしている身としては、現実味があるのはこっちです。1億円の企業を、100社作る。
数字を一つだけ。東京商工リサーチの調査では、2025年に休廃業・解散した企業は6万7,210件。3年連続で過去最多です(出典)。代表者の年齢は60代以上が9割を超えました。後継者がいないまま続けてきたお店が、静かに店を閉めている。
今やめていくお店は、余力がないお店です。先にお金を払って、ホームページを作って、決済を入れて、使い方を覚えて。そんな体力は残っていません。だから八百ビズは、売れた分だけ払う形にしました。固定費はゼロ。売れなければ、お店は一円も払わない。
もう一方の壁は、働き方です。
AIに仕事を奪われる、という話は増えています。でも「週に数時間しか働けない人」の仕事が増えた、という話は聞きません。時間を決められない人は、パートにも入れない。それでも、空いた時間に自分で考えて動くことはできるし、やりたいという人はいます。
八百ビズのパートナーは、シフトも勤務時間もありません。お店に行くのも、行かないのも自分で決める。報酬は成果に連動して、自分が連れてきたお店から売上が出るたびに積み上がっていく。最初は小さな額です。でも、固定で払う側の負担がゼロだからこそ、長く続けられる形にできる。
「当たればラッキー、当たらなくても損しない」。これが、うちの事業の基本スタイルです。お店も、パートナーも、うちも、誰も先に身銭を切らない。そのかわり、お店が伸びたときだけ、関わった全員にちゃんと分かれる。
埼玉県には15万社を超える中小企業があります。全部に届くとは思っていません。でも、越谷と春日部の、顔の見える範囲から始めることはできる。それが地域の活性化だと、私は思っています。
Claudeとは、こんなやりとりをしてきました
うちはVibeCordingという独自のやり方で、AIと対話しながらアプリを作っています。これまでに150本以上。今回のハッカソンも、企画から台本まで、相棒はずっとClaudeでした。時系列で書いてみます。
10月17日:何を出すか決める 「手持ちで入賞できそうなネタある?」から始まりました。Claudeは過去の案件を一通り見て、候補を並べて、AI経理を推してきました。私のほうは「Claude Codeをお客さんのPCに入れる前提だと、完全リモートでは厳しい」「真似されないか心配」と返す。そういう往復です。
10月26日:方向転換と応募 締切当日に「これ、審査員から見てAPIの使い方として弱くない?」と投げたら、議論が動きました。売る仕組み、御用聞き、決済の持ち方。その場で応募文の一式を書き直し、英語の一行も用意して、夜に送信しました。おまけで料金シミュレーターも作ってもらって、何ヶ月目で売り切り型を上回るかまで計算しました。
10月30日:選考通過
11月1日:法律の整理と名前決め パートナーの報酬の形について、「雇用のまま完全出来高は無理。業務委託の成果報酬型に組み直す」と、対案つきで指摘されました。アプリの中でお金を動かさない、という線引きもここで決まっています。 名前も、この日です。「御用聞き」は仮の名前で、八百屋から八百ビズへ。ドメインやGitHubで使われていないかも、その場で調べてもらいました。
11月2日:開発スタート キックオフは仕事で出られませんでした。その夜から、Claude Codeで実装。順番は、商品ドラフトの生成、音声入力、Stripe決済、明細、写真、シェアとQR。Claudeと相談して決めた優先順位です。
11月3日:撮影 デモ動画は、人が使っているシーンを先に撮って、本物の画面を後から差し込む形にしました。撮影できる日が今日しかなかったからです。コンテはPREP法で組み、冒頭は「眠っている商いを、空いた時間で掘り起こして売る。それが八百ビズです」の一言から。引きの絵から寄りへ、1カット3秒。映像屋としてのこだわりは、綺麗さよりも「やりたいことが伝わる」ことです。 現場では、スマホで1行ずつチェックできる撮影リストをClaudeに作ってもらって、それを見ながら20カットを撮りました。
相談していて助かっているのは、Claudeが「それは無理です」と言ってくれることです。対案を先に出してから、弱点を指摘する。ハッカソン中の8日間、一人で参加している身としては、この相手がいるのといないのとでは、まるで違います。
結果がどうであれ、これは続けます
提出は11月10日。受賞できるかどうかは分かりません。250人のうち、賞に届くのは最大6人と聞いています。
でも、八百ビズの仕組みは、ハッカソンの結果に関係なく進める価値があると判断しています。実際にお店があり、実際に働きたい人がいて、実際に売るものがある。足りなかったのは、それをつなぐ仕組みだけでした。
うちの会社は「中小企業とITをAIでつなげる会社」でありたいと思っています。八百ビズは、その一番わかりやすい形です。
「売るものはあるけど、売り方がわからない」。「働きたいけど、時間が決められない」。どちらかに心当たりのある方は、ぜひ声をかけてください。越谷・春日部あたりから、まず一社目を始めます。
結果が出たら、また書きます。



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