【2025年11月検証】ショート動画3大プラットフォームの真実:なぜTikTokだけ再生回数が1/4だったのか?
- 清彦 山崎
- 14 分前
- 読了時間: 11分

「AI生成動画をTikTok、YouTube Shorts、Instagram Reelsに投稿したら、どのプラットフォームが最も効果的なのか?」
この疑問に答えるため、YMMでは2025年11月、3つのプラットフォームで10日間にわたる実証実験を行いました。結果は驚くべきものでした。YouTubeとInstagramがほぼ同じ再生回数を記録した一方で、TikTokは他の2つの1/4程度の再生回数しか得られなかったのです。
この記事では、実験データを元に各プラットフォームのアルゴリズムの違いを解説し、特にTikTokの再生回数が低かった決定的な理由をお伝えします。中小企業の経営者や事業者の皆様が、限られたリソースで最大の効果を得るための実践的な知見をご提供します。
実験条件と驚きの結果
実験の前提条件
今回の実験では、以下の条件で同一のAI生成動画コンテンツを3つのプラットフォームに投稿しました:
Instagram Reels
開始時フォロワー数:200人以上
結果:YouTube Shortsとほぼ同等の再生回数を達成
YouTube Shorts
開始時登録者数:0人
10日後の登録者数:4人
結果:Instagramと同等の再生回数を達成
TikTok
開始時フォロワー数:0人
アカウント状況:1年以上前に作成し、放置していたアカウント
結果:他の2プラットフォームの約1/4の再生回数のみ
この結果から、3つの重要な疑問が浮かび上がりました:
なぜYouTubeは登録者0でも高い再生回数を獲得できたのか?
なぜInstagramは既存フォロワーが重要だったのか?
なぜTikTokだけが極端に低い再生回数だったのか?
これらの疑問に答えるため、2024年後半から2025年にかけての最新アルゴリズム動向を徹底調査しました。
YouTube Shorts:受動視聴型プラットフォームの強み
「ぼーっと見ている人」向けの設計
YouTube Shortsは**「受動視聴型プラットフォーム」**として設計されています。ショートフィードでは動画が自動的に無限に流れる仕組みで、視聴者は「選んでもいないのに勝手に動画が流れてきた」という体験をします。これはテレビCMに近い視聴体験です。
この設計により、新規クリエイターでも平等にチャンスが与えられます。実際、日本国内の13〜54歳の月間利用率は**62%**で、TikTok、Instagram Reelsを上回り第1位です。特に30〜40代での利用率が高く、YouTubeアプリを既に利用しているユーザーが「ついでに」Shortsをチェックする流れが定着しています。
2段階配信システムの仕組み
YouTube Shortsは独特の「Explore & Exploit」システムを採用しています:
第1段階(Exploreフェーズ)
投稿後数時間〜数日間、小規模なシード視聴者層にテスト配信
視聴維持率70%以上、完視率80-90%、スワイプ離脱率40%未満が合格基準
第2段階(Exploitフェーズ)
第1段階で基準を満たした場合、ショートフィードで大規模拡散
この段階で数十万〜数百万再生が可能
重要な特徴:このシステムは登録者数に関係なく機能します。登録者0のチャンネルでも、コンテンツの質が高ければ平等に拡散される可能性があります。
「再生は多いが登録者は増えない」問題
今回の実験でも「10日で4人の登録者」という結果になりました。これは実は典型的なパターンです。YouTube Shortsの視聴者は「スワイプ消費」モードで、チャンネル登録という能動的アクションまで至りません。
業界標準として、Shortsからの登録者転換率は**1-3%**と非常に低いことが知られています。ただし、明確な導線設計により改善が可能です:
すべてのShortsに長尺動画へのリンクを追加
ピン留めコメントで誘導
シリーズ企画を展開(単発動画より67%高い転換率)
具体的なCTA(「登録してね」より「毎週○○を受け取りたい方は登録」が3倍効果的)
Instagram Reels:コミュニティファーストの本質
アルゴリズムの根本的な違い
Instagram CEO Adam Mosseriが2025年1月に公表した情報により、Reelsアルゴリズムの本質が明らかになりました。Instagramは**「コミュニティファーストモデル」**を採用しており、TikTokの「ディスカバリーファースト」とは正反対のアプローチです。
Instagramには2つのリーチタイプがあります:
Connected Reach(つながりのあるリーチ):既存フォロワーへの配信
Unconnected Reach(つながりのないリーチ):新規ユーザーへの配信
重要なのは、Connected Reachが基盤となり、そこでのエンゲージメントがUnconnected Reachへの展開を決定することです。
3大ランキング要素
視聴時間:両タイプのリーチで最も重要(相対的・絶対的の両方)
いいね数/リーチ比:Connected Reachでより重要
シェア数/リーチ比:Unconnected Reachでより重要
なぜ200人のフォロワーが重要だったのか
今回の実験で「200人のフォロワーから始めたInstagramがYouTubeと同等の再生回数」を達成できた理由:
初期露出の確保 Instagramは最初に小規模なユーザーグループにReelsを表示します。200人のフォロワーがいれば、この初期テストグループが自動的に確保されます。
エンゲージメントシグナルの生成 既存フォロワーからのいいね、コメント、シェアが発生しやすく、これらのシグナルがアルゴリズムの評価を高めます。
数値で見る違い Hootsuite社の実験により判明したデータ:
TikTok:エンゲージメント率7.4%、ビュー/フォロワー比率24.86%
Instagram Reels:エンゲージメント率1.23%、ビュー/フォロワー比率144.03%
この144.03%という数値は、フォロワーが何度も動画を見返している、またはフォロワーが友人にシェアしているという証拠です。まさに「コミュニティにとって良い動画」が評価されています。
日本市場特有のコミュニティ文化
月間アクティブユーザー約6,600万人(2024年)で、人口の44.4%以上がInstagramを利用しています。日本のInstagramユーザーの45%が匿名を好むという特徴があり、既存の社会的つながり内でのやり取りを優先する傾向が強いです。
TikTok:高度なAI学習アルゴリズムの両刃の剣
新規クリエイターへの露出は健在
TikTokのアルゴリズムは確かに進化していますが、新規クリエイターへの露出機会は依然として存在します。
初期露出メカニズム 新規アカウントの初投稿でも約300〜500回の再生が保証されており、小規模グループ(約100〜300人)への配信からスタートします。エンゲージメント率が高ければ、段階的に拡大する仕組みです。
しかし基準が厳格化 TikTok Creator Summit Japan 2024で公表されたデータによると、ハイクオリティコンテンツを投稿するクリエイターは、そうでないクリエイターと比べて:
動画1本あたりのフォロワー増加率が40倍高い
視聴回数は3倍以上
視聴時間は67%高い
2024-2025年の重要な変化
TikTokアルゴリズムは2024年に大きな変更がありました:
従来(2021年9月以前)
新規投稿は、フォロワーの数に関係なく必ず500回以上再生される
現在(2024年以降)
フル視聴率(最後まで視聴した割合)を重視
TikTokストーリーズやライブの反応率を評価
同じクリエイターや同じ楽曲を繰り返し流さないように調整
日本市場の現状
月間アクティブユーザー数は3,300万人以上(2024年11月)で、2019年の950万人から約3.5倍に成長しています。特に30代以上の新規ユーザーが顕著に増加しており、平均年齢は35.9歳まで上昇しました。
TikTok Shopの日本開始(2025年6月)により、ビジネス利用も急増中です。
決定的な発見:なぜTikTokだけ再生回数が1/4だったのか
ここからが今回の実験で最も重要な発見です。
仮説:休眠アカウントの「オーディエンス固定化」問題
実験後の詳細な調査により、TikTokの低い再生回数の原因が判明しました。それは**「1年以上放置されていた既存アカウントを使用したこと」**でした。
アカウントには「ジャンル認識」が蓄積される
TikTokのアルゴリズムは、アカウントを「特定のジャンルに特化している」として認識します。投稿ジャンルを統一することで、そのジャンルに関心のある視聴者に効果的に配信されます。
しかし、異なるジャンルの動画をバラバラにアップすると、アルゴリズムが混乱し「このアカウント、何がメインなの?」という状態になります。
過去のオーディエンスが固定化されている
TikTokのアルゴリズムは「視聴秒数/いいね/コメントなどをひたすら学習し、そのカスタマーが気に入りそうな動画のみをひたすら露出している」仕組みです。
つまり、1年前にアカウントを見ていた人たちのデータが蓄積されており、その人たちに新しい動画が配信されている可能性が高いのです。
何が起きていたのか:詳細分析
【1年前】
↓
TikTokアカウント投稿(ジャンルA:例えば教育コンテンツ)
↓
フォロワー層形成(ジャンルAに興味がある人)
↓
TikTokがアカウントを「ジャンルA専門」と認識
↓
【1年間放置】
↓
【2025年11月】
↓
新しい動画投稿(ジャンルB:AI生成動画)
↓
TikTokのアルゴリズム判断:
「このアカウントはジャンルAだから、ジャンルAが好きな人に配信しよう」
↓
配信先:1年前のフォロワー(ジャンルAに興味がある人)
↓
結果:新しいジャンルBの動画に興味がない → 反応が悪い
↓
アルゴリズムの最終判断:「この動画は評価が低い」→ 拡散停止
クオリティの問題ではない
YouTubeで300-500再生されている同じ動画がTikTokで伸びないのは、まさに**「オーディエンスのミスマッチ」**です。動画のクオリティは十分なのに、間違った視聴者層に配信されていたのです。
この発見は、TikTokアルゴリズムの高度さを示すと同時に、アカウント運用の戦略的重要性を浮き彫りにしました。
解決策:2つの選択肢
選択肢1:新しいアカウントを作成(推奨)
メリット
クリーンスタート
新しいジャンルで適切なオーディエンスに配信される
初投稿から正しいアルゴリズム学習が始まる
具体的手順
完全に新しいメールアドレス/電話番号で登録
最初の20本は完全に統一されたジャンルで投稿
1日3-5本の高頻度投稿を維持
プロフィールで明確にジャンルを宣言
期待される効果
2週間後:平均2,000〜5,000再生
1ヶ月後:安定して5,000〜10,000再生
3ヶ月後:初バイラル(10万再生)が可能
選択肢2:既存アカウントのリセット(困難だが可能)
手順
1年前の動画をすべて削除または非公開
プロフィールを完全に書き換え(新ジャンルを明示)
2週間何も投稿せず「アカウント冷却期間」を設ける
新しいジャンルで統一された動画を1日5本、2週間連続投稿
アルゴリズムに「このアカウントは生まれ変わった」と認識させる
注意点 既存アカウントの「リセット」は成功率が不確実です。新アカウント作成の方が確実に正しいオーディエンスに届きます。
中小企業のための実践的プラットフォーム戦略
段階的マルチプラットフォーム展開
フェーズ1(開始〜3ヶ月):TikTok集中
投資:週15-20時間
理由:最速リーチ、フォロワー不要、製作コスト最安
目標:平均5,000-10,000再生、初バイラル達成
フェーズ2(3-6ヶ月):TikTok + Instagram
投資:週20-25時間
理由:コンテンツ再利用、コミュニティ構築
目標:合計15,000-30,000フォロワー、月間リーチ100万回
フェーズ3(6ヶ月以降):3プラットフォーム完全展開
投資:週25-30時間または外注
理由:各プラットフォームの強み活用、マネタイズ開始
目標:総フォロワー30,000人以上、月間収益化
業種別推奨プラットフォーム
飲食店・グルメ
優先順位:TikTok → Instagram
理由:ビジュアルコンテンツの相性、#TikTokグルメは66億再生
製造業・職人技
優先順位:TikTok → YouTube
理由:Behind the scenesコンテンツが人気、詳細解説はYouTubeで
教育・コンサルティング
優先順位:YouTube → Instagram
理由:YouTubeのSEO強化、Instagramでコミュニティ構築
AI生成コンテンツの適切な活用
2024-2025年、すべてのプラットフォームがAI生成コンテンツに対して明確なポリシーを制定しました。重要なのは:
透明性の確保 AI使用を積極的に開示。隠すことがリスクです。
品質重視 量産より価値のある内容。「人間の創造的努力が明確」であることが重要です。
驚きのデータ Buffer社の調査により、適切に開示されたAI生成コンテンツのエンゲージメント率は:
TikTok:+47.2%向上
YouTube:+10.1%向上
適切に運用すれば、AIはアルゴリズム上不利にならないどころか、むしろエンゲージメント向上の可能性があります。
まとめ:3つの重要な教訓
今回の実証実験から得られた決定的な教訓は:
1. プラットフォームごとに「勝利の方程式」が全く異なる
YouTube Shorts:受動視聴型で初心者に最も優しい。登録者0でも平等にチャンス
Instagram Reels:コミュニティファースト。既存フォロワーとの関係性が成功の鍵
TikTok:高度なAI学習。アカウント履歴が重要で、ジャンル統一が必須
2. アカウント戦略が成功を左右する
TikTokの実験結果が示したように、アカウントの「履歴」と「ジャンル認識」は想像以上に重要です。休眠アカウントの再利用は、オーディエンスミスマッチを引き起こし、どれだけ高品質なコンテンツでも埋もれてしまう可能性があります。
新しいジャンルで挑戦する場合は、新しいアカウントで始めることを強く推奨します。
3. 段階的展開が中小企業の最適戦略
限られたリソースを持つ中小企業は、3つのプラットフォームを同時に始めるのではなく:
TikTokで最速のリーチを獲得
Instagramでコミュニティを構築
YouTubeで長期的な資産を形成
という段階的アプローチが最も効果的です。
あなたのビジネスにショート動画を活用しませんか?
株式会社山崎メディアミックスでは、今回の実証実験で得られた知見を基に、SNS動画活用の講義・研修を提供しています。
講師実績
これまで以下の団体様にて、実践的なSNS動画活用の講義を実施してまいりました:
ロータスクラブ埼玉
番場商店街振興組合
その他、中小企業・商店街・地域団体など多数
講義内容(カスタマイズ可能)
各プラットフォームのアルゴリズム最新動向
AI生成動画の効果的な活用法
限られた予算での最大効果を生む戦略
実際の成功事例と失敗事例の分析
ハンズオンでのアカウント開設・投稿サポート
こんな課題をお持ちの方へ
「ショート動画に興味はあるが、何から始めればいいかわからない」 「TikTokを始めたが全く再生されない」 「複数のプラットフォームの使い分けがわからない」 「AI生成動画を使いたいが、規約が心配」
これらの課題に対して、実証実験に基づいた実践的なアドバイスをご提供します。
お問い合わせ
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貴社のビジネスに最適なショート動画戦略を、一緒に構築させていただきます。
株式会社山崎メディアミックス 代表取締役 山崎清彦
本記事の実験データは、2025年11月に実施した実証実験に基づいています。各プラットフォームのアルゴリズムは常に進化しているため、最新情報の確認をお勧めします。



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