学習支援ねむの木でのAI体験授業レポート:子どもたちとテクノロジーの可能性
- 清彦 山崎
- 10月22日
- 読了時間: 5分
2024年10月20日、横浜市で学習支援ねむの木の第1回AI体験授業が開催されました。小学生から高校生まで、そしてボランティアの学生さんたちが参加したこの取り組みは、子どもたちがAI技術とどう向き合い、どんな可能性を見出せるかを探る貴重な機会となりました。
しら〜っとスタートした理由
当日、参加者の到着時間がバラバラだったため、全員が揃うのを待つのではなく、ゆったりとした雰囲気で授業をスタートさせました。この柔軟なアプローチは、学習支援の現場では重要です。子どもたちそれぞれの生活リズムや事情を尊重しながら、誰もが参加しやすい環境を作ることが、学習支援の本質だと考えています。
今回の第1回開催には、実は二つの大きな目的がありました。一つは、子どもたちがAIに対してどんな興味を持っているかを知ること。もう一つは、今後1年間のカリキュラムを構築するための現地調査です。教室で理論を学ぶだけでなく、実際の現場で子どもたちの反応を見ながら学ぶことが、何よりも価値のある情報源となりました。
事前準備で見えてきた課題
授業を始める前に、会場のWi-Fi環境の確認や、実際にAIを使ったプロジェクトを試してみました。この準備段階で重要だったのは、子どもたちがどのタイミングで手持ち無沙汰になるか、そしてAIの生成処理中にどう飽きさせないかという点でした。
AIツールを使う際、生成に数十秒から数分かかることがあります。大人なら待てる時間でも、子どもたちにとっては長く感じられます。このタイミングの把握が、今後のカリキュラム設計において重要な要素になると確信しました。
AIの基礎:標準的な回答とガイドライン
約5人の参加者が入れ替わりながら活動する中で、まず最初に伝えたのはAIの特性についてです。
AIは「標準的な回答」をする傾向があること、そしてAI開発会社が定めたガイドラインに準拠して動作していることを説明しました。私は講師としてではなく、アドバイザーとして子どもたちのそばに立ち、AIへの入力文を一緒に考える形で進めました。
この「一緒に考える」というスタンスは、子どもたちの主体性を引き出すために意識的に選んだアプローチです。答えを教えるのではなく、どう質問すればAIから良い回答が得られるかを共に探ることで、子どもたち自身が試行錯誤する力を育てたいと考えています。
クリエイティブな世界への挑戦
動画生成とイラスト作成
今回の授業では、AIを使ったさまざまなクリエイティブ活動を体験しました。
まず、動画生成AIのSORAを使った映像制作や、ChatGPTによるイラスト作成に挑戦しました。ここで重要だったのは、著作権のガイドラインをしっかり学ぶことです。AIが生成したコンテンツの権利関係は複雑で、「使える場合もあれば使えない場合もある」という不確実性があります。
この曖昧さを子どもたちに伝えることは簡単ではありませんでしたが、デジタル時代を生きる彼らにとって、著作権の意識を早い段階から持つことは非常に重要です。完璧な答えがない問題に向き合う経験そのものが、学びになると感じました。
音楽制作への挑戦
次に、AIによる作詞と楽曲制作にも取り組みました。自分の言葉がメロディに乗る瞬間、子どもたちの目が輝くのが印象的でした。音楽の専門知識がなくても、AIのサポートによって自分のイメージを形にできる体験は、創造性を引き出す大きなきっかけになります。
プログラミング体験:面白さを追求する
VibeCordingでゲーム制作
授業の最後には、VibeCordingを使ったプログラミング体験を行いました。まず「1行で書けるゲーム」をAIにリストアップしてもらい、その中から**落ちゲー(落下物を避けるゲーム)**を選んで作成しました。
AIの力を借りれば、ゲームはすぐに立ち上がります。しかし、最初のバージョンは正直、あまり面白くありませんでした。そこで子どもたちに「どうしたら面白くなる?」と問いかけ、一緒にプロジェクトをブラッシュアップしていきました。
この過程こそが、プログラミング学習の本質です。動くものを作ることがゴールではなく、より良いものに改善していく思考プロセスを身につけることが重要なのです。
性別による興味の傾向
今回の授業で興味深かったのは、性別による興味の傾向が見えたことです。
女子生徒は、絵や動画、音楽といったビジュアル・オーディオ系のクリエイティブに夢中になる傾向がありました。一方、男子生徒は、ゲーム制作にのめり込む姿が目立ちました。
もちろん、これは一般的な傾向であり、個人差があります。しかし、こうした傾向を把握しておくことで、それぞれの子どもが苦手意識を感じる瞬間や、興味が薄れるタイミングをより的確に捉えられるようになります。
これからのカリキュラム作りに向けて
第1回の授業を通じて、多くの発見がありました。
Wi-Fi環境の安定性確保の重要性
AI生成の待ち時間をどう活用するか
著作権教育のバランス
性別や年齢による興味の違い
手持ち無沙汰にならないタイミング設計
これらの知見を活かし、今後1年間のカリキュラムを構築していきます。子どもたち一人ひとりの興味や特性を尊重しながら、AIという新しいツールを通じて、創造性や問題解決能力を育んでいける場を作りたいと考えています。
学習支援とテクノロジーの融合
学習支援ねむの木でのAI体験授業は、単なる技術教育ではありません。子どもたちが**「自分で考え、試し、改善する」**というサイクルを体験する場です。
AIは万能ではありません。しかし、適切に使えば、子どもたちの可能性を大きく広げるツールになります。この第1回の経験を土台に、子どもたちが安心して挑戦できる環境を作り続けていきます。
次回の授業も、子どもたちの笑顔と真剣な眼差しに出会えることを楽しみにしています。
生成AIと子どもの学習支援にご興味がありましたら無料相談を承っております。



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