七夕まつりの後日譚。アプリが言葉の壁を越えた日
- 清彦 山崎
- 15 分前
- 読了時間: 4分

せんげん台の七夕まつりが終わって、少し経った頃のことです。
埼玉県立大学の学生さんから、動画と写真が届きました。
そこに映っていたのは、留学生の皆さんが七夕アプリの画面をのぞき込みながら、作品を選んでいる様子。私が知らないところで、このアプリは新しい役割を果たしていたのです。
前回の記事では、七夕まつりを支えたWebアプリの仕組みと、イベント初日に「その日のうちに機能を追加した」出来事を書きました。今日はその後日譚と、そこから生まれた次の構想についてお話しします。
「翻訳、どんぴしゃで出ますよ」
この試みを行ってくださったのは、埼玉県立大学の文化人類学がご専門の浅川泰宏教授です。
浅川先生は、昨年からせんげん台七夕まつりに参加されている方で、今回のアプリ開発でも、企画の段階からさまざまなご意見をいただきながら一緒に作ってきました。
その浅川先生が、祭りの最終日あることに気づかれます。
このアプリはWebブラウザで動く。ということは、ブラウザの翻訳機能で文字を英語に変換できるのではないか――。
現地で試しに動かしてみたところ、作品の写真と一緒に掲載されている解説文が、どんぴしゃで翻訳されていたそうです。
学生たちが各地の伝統文化を調べて書いた解説文が、そのまま英語で読める。この発見をもとに、浅川先生は留学生にすべての作品の翻訳を見てもらい、好きな作品を選んでもらうという試みを行ってくださいました。
日本の七夕、各地の伝統文化、そして商店街。それらが、翻訳ボタンひとつで留学生に届いたのです。
開発者が知らなかった、アプリの可能性

実は私はこの使い方を最初から狙っていたわけではありません。
多言語対応を意識して作り込んだのではなく、「Webブラウザで動く」という設計を選んでいたことが、結果として言葉の壁を越える下地になっていた。紙のパンフレットなら、英語版を作るには翻訳して、レイアウトし直して、刷り直す必要があります。Webなら、読む人の側で言語を選べるのです。
そしてもうひとつ。当日の発表に私は参加できなかったのですが、学生さんが動画と写真を送ってくださいました。作り手の手を離れたアプリが、現場の先生と学生の発想で新しい使われ方をして、その報告が届く。開発者として、これほど嬉しいことはありません。
道具は、作った人間の想像を超えて使われたとき、本当に地域のものになるのだと思います。
次の構想:まちを「何層ものテーマ」で歩くアプリ
この後日譚が、ひとつのアイデアを生み出しました。
七夕アプリを振り返ると、来場者は実は3つのテーマでまちを歩いていました。小学生の短冊を探す人。県大生の作品をめぐる人。スタンプラリーを楽しむ人。同じ商店街を、それぞれ違う「地図」で歩いていたわけです。
これを最初から設計に組み込んだらどうなるか。
いま構想しているのは、地域を複数のテーマ(レイヤー)で回遊するWebアプリです。スタンプラリーという1本の軸だけでなく、3つの軸、さらにはn個の軸を重ねられる仕組み。たとえば同じまちを、アートの地図で歩く人がいて、歴史の地図で歩く人がいて、食べ歩きの地図で歩く人がいる。テーマが増えるほど、訪れる理由が増え、再訪のきっかけも増えます。
こちらは、全国の大きな規模の商店会のイベントでお使いいただけるようなシステムとして、七夕まつりのアプリをベースに現在制作を進めています。製品としてリリースできましたら、あらためてこの場でお伝えしていきます。
地域×大学×テクノロジーの続きを
小さな商店街のイベント用に作ったアプリが、留学生の文化体験につながり、次の製品の構想を生む。
七夕まつりが終わったあとも、物語は続いています。
商店街振興組合や自治体の皆さまで、「うちの地域を複数のテーマで歩けるようにしたい」「大学や学校と組んで何かやってみたい」という方がいらっしゃいましたら、構想段階の今だからこそ、ぜひお話を聞かせてください。皆さまの現場の声が、このシステムを育てていきます。
