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「なぜ、うちの会社なのか」——高校生にそれを聞く前に

8月18日
読了時間: 8分

面接官の席に、4年座っています

私は高校の模擬面接官を4年やっています。生徒の面接練習の相手役です。埼玉県越谷市で映像制作とAIの会社をやっている人間が、なぜ面接官の席に座っているのか。ご縁があって呼ばれ、続けているうちに4年になりました。

私が生徒に言っていることは、ひとつだけです。


「自分のストーリーを乗せて、なぜその会社に行きたいのかを話して」


これしか言いません。話し方の型も、模範解答も教えません。あなたがこれまで何をしてきて、その先にどうしてこの会社があるのか。そこを自分の言葉でつなげてくれ、と伝えています。

生徒たちは真面目です。言われたとおり、自分のストーリーを一生懸命に組み立てようとします。

ただ、練習を重ねるうちに、私のほうが気づいたことがありました。

生徒が持っている材料の量が、あまりにも少ない。


「なぜその会社か」を語る材料は、どこにあるのか

考えてみてください。高校生が「なぜ御社なのか」を語るには、御社のことを知っていなければ話になりません。

では、その子は御社の何を知っているのか。

手元にあるのは求人票です。会社の名前、所在地、業種、仕事の内容が数行、給与、休日、必要な資格。あとはスマホで検索して出てきたもの。

それだけです。

見学に行ける子もいます。でも多くの生徒にとって、判断の材料はこの二つがほぼ全部です。

そのうえで「なぜうちの会社を志望したのですか」と聞かれる。

待てよ。材料を渡していないのは、こちらのほうじゃないか。

これが、面接官の席に座っていて私が思ったことです。生徒の努力が足りないのではありません。語るための材料が、会社の側から出ていない。


会社の中には、材料が山ほどある

誤解のないように申し上げます。中小企業に語ることが無い、と言っているのではありません。逆です。

私は映像の仕事を20年以上やってきて、越谷や近隣の会社さんの現場に入らせていただいてきました。そこで毎回思うのは、どの会社にも、外から見ただけでは絶対に分からない面白さがあるということです。

たとえば運送・倉庫の会社さんの現場に入ったときのこと。フォークリフトに乗る方の仕事を撮らせていただいて、あれは荷物を運ぶ仕事ではなく、限られた空間にどう積むかを組み立てる仕事なのだと分かりました。頭の中で立体を組んでいる。うちが後に出した動画に、昔から私を知っている視聴者の方が「倉庫番みたいに空間デザイナーなんですね」とコメントをくださいました。

外の人間がひとこと聞いて分かる話ではありません。中で毎日やっている人にとっては当たり前すぎて、言葉にする機会がないだけです。

この「当たり前すぎて言葉になっていないもの」が、高校生にとっては全部が初耳の材料になります。

模擬面接官をやっていて、学校の先生からこういう声をいただいたことがあります。三郷の高校のI先生からです。「知らない世界を教えてもらえてよかった、という生徒の声が多かった」と。

生徒は知らない世界を知りたがっています。知る手段が無いだけです。


求人票の「外」に、何が出ていますか

そこで、ひとつだけお願いがあります。今日この記事を読み終えたら、御社の名前で検索してみてください。

出てきたものが、高校生から見えている御社の全部です。

チェックする点は、多くありません。

1) どんな仕事なのか、動いている姿が見えるか

求人票の「製造業務全般」「倉庫内作業」という言葉から、17歳が仕事の中身を想像するのは無理です。何を作っているのか、その日はどんな手順で進むのか。写真1枚、動画30秒でも、言葉より早く伝わります。

2) 誰と働くのか

高校生が一番不安なのはここです。どんな人がいるのか。年齢は。話しかけていいのか。顔がまったく出てこない会社に、17歳が「なぜこの会社か」を語るのは相当に難しい。

3) 何が面白いのか

一番出ていないのがこれです。給与も休日も求人票に書いてあります。書いていないのは、その仕事のどこが面白いのか。ベテランの方が何に誇りを持っているのか。ここが出ていれば、生徒は「自分のストーリー」をそこに接続できます。

4) それは今も更新されているか

最終更新が3年前のまま、というのはよくあります。高校生は日付を見ます。止まっているように見えます。


ここで、盛ってはいけません

ただし、大事な一線があります。

良く見せるための材料を作ってはいけません。

私たちの会社は、誇大表現をしないことを理念にしています。これは広告の話だけではなく、採用でこそ効きます。

盛って採ると、来た子が「聞いていた話と違う」と辞めます。会社は採用にかけた時間とお金を失い、その子は最初の職場でつまずきます。双方が損をします。

高校生も、雇う会社さんも、みんな不安です。就職は縁組のようなものだと私は思っています。それがよりよいものになるようにお手伝いするのが、うちの仕事の本懐だと思っています。ですから私は、企業の一方的な味方ではありません。高校生にも社会の仕組みを伝えますし、会社さんにも正直に出すことをお勧めします。

出すべきは、普段の仕事そのままです。きれいな職場に見せる必要はありません。汚れた作業着で、重いものを運んで、それを毎日続けている。それが分かる形で出ていれば、それを見たうえで来た子は、辞めません。

材料を出すというのは、誤解を減らすことです。人を釣ることではありません。


実際、どうやって出すか(うちの値札もそのまま書きます)

「言いたいことは分かった。で、うちは何をすればいいのか」という話をします。

うちに頼まなくてもできることから順に並べます。

A案:自社でやる(0円)

一番安いのは、社長のスマホです。作業風景を30秒撮って、その場でひとこと入れる。編集アプリはInShotかVLLOをお勧めしています。無料で使えて、字幕も入ります。

これで十分な会社さんもあります。実際、私は各種団体向けにスマホ映像の講義を30講義以上やってきましたが、続けられる会社さんは自社で回します。

問題は続くかどうかです。社長は忙しい。1本目は撮れて、2本目が半年後になる。それが一番多いパターンです。

B案:型を1本だけ作ってもらって、あとは自社で回す(ショート動画制作 130,000円)

内訳を書きます。企画ヒアリング3万円、撮影1日5万円、編集1日5万円で13万円です。

これは実際にご依頼をいただいた形です。運送・倉庫の会社さんから、就職活動向けのショート動画を作りたい、それを社内の文化として根付かせたい、というご相談でした。制作と一緒に編集のデモンストレーションもやらせていただき、社内で情報を更新していく素養が生まれた、と言っていただきました。参加された方から「分かりやすかった」という声もいただきました。

高校生は今、求人票以外にショート動画で会社を知ることが多い。ここは模擬面接官を4年やっているぶん、実感として分かっています。

C案:検索したときの受け皿ごと作る(Webサイト制作パッケージ 300,000円/保守 月20,000円)

動画を作っても、検索して出てくる先が無ければ止まります。うちのWebパッケージは、AIがブログの下書きを書く仕組みが入っていて、保守料に利用料も含めて月2万円です。社長は朝、出てきた原稿を読んで、公開するかどうかを判断するだけになります。

なぜAIにブログを書かせるのか。更新が止まるのが一番の敗因だからです。人手が足りない会社ほど、ここで止まります。

ちなみに、AI導入には補助金が使えるケースがあります。ただし要件は毎年・公募回ごとに変わりますし、対象は会社ごとに違います。私は補助金の専門家ではないので、「使えます」とは申し上げません。ご一緒に調べて、必要なら専門家におつなぎします。必ず公募要領でのご確認をお願いします。


人数を増やせない会社にも、方法はあります

「動画も撮って、サイトも直して、そんな人手はうちに無い」

そのとおりだと思います。うちも同じです。

一例を挙げます。急速冷凍サービス「白くまストック」を手がける株式会社ストレートさまから、映像のご依頼をいただいたことがありました。「お安くしてほしい」というご要望でした。

私は人数を削るのではなく、先に構成を全部組んでから動くことにしました。企画、撮影、照明、音声、編集、YouTubeチャンネルの立ち上げとアップロードまで、一人でやりました。企画から数えて3日。うち現地での撮影・編集が2日です。

先方の牛沢さまから、こういうお言葉をいただきました。

安さだけでなくきちっと構成を考えてワンオペでも綺麗に仕上がるようにつくったので、まるで大手CM制作会社のプロが数人でチームを組み制作した様な完成度です。

自慢をしたいのではありません。申し上げたいのは順番のことです。人が少ないから雑になるのではなく、先に考えていないから人が要るのです。

採用の発信も同じです。毎日投稿する必要はありません。「どんな仕事か」「誰と働くか」「何が面白いか」の3つが分かるものを、先に組んで作る。あとはそれを置いておく。まずはそこからで十分です。


最後に

高校生に「なぜうちの会社なのか」を語ってもらいたい。その気持ちはよく分かります。私も面接官の席で、それを聞く側に回っています。

ただ、その問いに答えてもらうには、答えるための材料が要ります。求人票とスマホの検索結果しか渡していないのに、深い志望動機を期待するのは、少し酷かもしれません。

材料を出すのは、会社の側からです。

そして、その材料は探しに行くものではなく、御社の中にもうあります。毎日やっていて当たり前になっているだけです。

今日、自社の名前で検索してみてください。それが高校生から見えている御社の全部です。

採用のことも、AIのことも。越谷で気軽に聞ける相手でいます。



 
 
 

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