AIのトラブル、社外の専門家しか相談先がない——越谷の中小企業が、社内にAIの知識を溜めていく順番

「何かあったとき、誰に聞けばいいんですか」
先日、越谷でAIの話をしていたときのことです。ひととおり説明が終わったあと、社長さんがぽつりとおっしゃいました。
「AIを導入するのはいい。でも、動かなくなったとき、うちの誰に聞けばいいんですか」
これは、とても正しい心配です。
パソコンが壊れたら、出入りの業者さんに電話する。コピー機が止まったら、リース会社のサポートに電話する。では、AIがおかしなことを言い始めたときは、どこに電話するのか。
大企業には情報システム部があります。専任の担当者がいて、社内で切り分けができる。けれど、社員数人から数十人の会社に情報システム部はありません。社長がパソコン係を兼ねている会社も、越谷にはたくさんあります。
つまり、相談先が最初から社外にしかない。 これがAIで止まる、いちばん大きな理由だと私たちは見ています。
技術がむずかしいから止まるのではありません。「困ったときにどうにもならない」から、そもそも始められない。
この記事では、中小企業がAIでつまずく代表的な5つの場面を挙げたうえで、私たちが自分の会社で実際にやってきた「社内にAIの知識を溜めていく順番」を、値段まで含めて正直に書きます。外部の専門家に丸ごとお願いする以外の道が、ちゃんとあるという話です。
中小企業がAIでつまずく、5つの場面
まず、よくある行き止まりを並べます。おそらく、どれかに心当たりがあるはずです。
① 答えが間違っているのに、間違いだと気づけない
AIは、知らないことでも堂々と答えます。相手が自信たっぷりだと、こちらは信じてしまう。社内に「それは違う」と言える人がいないと、間違ったまま通ってしまいます。
② 入れてはいけない情報を、入れてしまう
お客さまの名簿、見積書、まだ発表していない案件。どこまで入れていいのか、社内に線を引ける人がいない。だから怖くて誰も使わない、あるいは誰かがこっそり全部入れている。どちらも困ります。
③ 導入したのに、誰も使っていない
契約はした。アカウントも配った。三ヶ月後に見たら、使っているのは社長だけ。よくあります。
④ 使い方を聞ける相手がいない
「こういうときはどう聞けばいいのか」を、その場で聞ける人がいない。一人で試して、うまくいかなくて、やめる。
⑤ 詳しい人が辞めたら、全部止まる
若い社員が一人でAIを回していた。その人が辞めた。何をどう設定していたのか、誰も分からない。これは、AIに限らず中小企業がずっと抱えてきた問題です。
この5つに、外部の専門家は効くのか
ここで、多くの記事は「専門家に相談しましょう」で終わります。私たちはそこで止まりたくありません。
外部の専門家は、①と②には効きます。法律や技術のことは、外の人のほうが詳しい。私たちも、補助金の要件や法務の判断は、その道の専門家におつなぎします。
けれど、③④⑤は、外の人には解けません。
なぜか。この3つは全部、「その会社のことを知っているか」の問題だからです。
誰が何をやっているのか。どの作業がいちばん面倒なのか。誰に頼めば話が早いのか。それは、外から来た人が三ヶ月で分かるものではありません。
そして、ここに私たちがAIについて一番大事だと思っていることが重なります。
AIは「会社のことを何も知らない、優秀な新入社員」
私たちがいつも使うたとえです。
AIは、会社固有の知識を持たない、優秀な新入社員。
頭はいい。文章は速い。夜中でも文句を言わない。でも、あなたの会社のことは何ひとつ知りません。倉庫のあの棚の高さも、あのお客さまが納品書のハンコの位置にうるさいことも、梅雨時にあの機械が少しだけ調子を崩すことも、知らない。
新人が入った初日を思い出してください。どんなに優秀でも、いきなり現場は任せませんよね。先輩がついて、「これはこうやる」「ここは気をつけろ」と教えていく。半年、一年かけて戦力になる。
AIも同じです。会社の知識を教え込んで、初めて戦力になる。 私たちはこれを「知識蒸留」と呼んでいます。難しそうな言葉ですが、やっているのは新人教育とほとんど同じです。
そう考えると、さっきの問いの形が変わります。
「AIに詳しい人を、どこから連れてくるか」ではない。
待てよ。AIに教えるのは、うちの仕事を知っている人じゃないのか。
教える側は、もう社内にいます。20年やってきたベテランです。足りないのは知識ではなく、教え方の順番だけです。
私たちが自分の会社でやってきた順番
きれいごとに聞こえるかもしれないので、私たちが自分の会社でやってきたことを書きます。YMMも社員が実質一人の会社です。情報システム部はありません。実験台は、いつも自分の会社でした。
1年目にやったこと:まず自分が100回失敗する
私たちは、VibeCording®という進め方で、100日で100個のアプリを作りました。1日1個です。うまくいったものも、まったく使い物にならなかったものもあります。
なぜそんなことをしたか。AIのクセを、体で知るためです。 どこで嘘をつくか、どういう聞き方だと外すか、何をやらせると速いか。これは本を読んでも身につきません。100回やって、ようやく分かってきました。
中小企業の社長さんに100個作れとは言いません。でも、最初の10回くらいは、うまくいかないのが普通だと知っておくこと。これが1つ目の順番です。1回試して「使えない」と結論を出すのが、いちばんもったいない。
2番目にやったこと:会社の決めごとを、文字にする
これが本体です。
私たちの会社では、判断の基準を全部ファイルに書いています。理念、値段の付け方、やってはいけないこと、過去に失敗したこと。AIは毎回それを読んでから仕事をします。
たとえば私たちのAIには、「安さを売りにしてはいけない」「補助金が使えると断言してはいけない」「値段を"お問い合わせください"で濁してはいけない」と書いたものを読ませています。だからAIが原稿を書くとき、そこを外しません。
面白いのは、この作業がAIのためだけではないことです。書き出してみて初めて、「うちはこういう理由でこう決めていたのか」と自分で気づく。AIは、社長にとっての鏡にもなります。
3番目にやったこと:直したところを、その場で書き足す
AIが出したものに赤を入れますよね。そこで終わらせず、「なぜ直したか」を1行、書き足しておく。
私たちは、社長が実際に赤を入れた記録を一枚の表にして持っています。「説明口調になっている」「値段が数字だけで置かれている」「実績の数字と褒め言葉を別の案件からつなげている」——こういう症状と直し方が並んでいます。推測で書いたものは1件も入れません。実際に直したものだけです。
この表があると、次からAIは同じ間違いをしません。1回の赤入れが、会社の資産になる。 これが「社内にAIの知識が溜まる」ということの、いちばん具体的な姿です。
4番目:詳しい一人に集中させない
⑤の「詳しい人が辞めたら止まる」への答えが、ここです。
ファイルに書いてあれば、書いた人が抜けても残ります。逆に、誰かの頭の中だけにあると、その人と一緒に出ていきます。溜める場所を、人ではなくファイルにする。 順番としては地味ですが、効きます。
実際にやってみると、こうなる
言葉だけだと分かりにくいので、実際の仕事の話を書きます。
運送・倉庫の会社での話
丸越運輸倉庫株式会社さんで、リクルート向けのショート動画制作と編集の講義をさせていただきました(13万円・掲載許諾済み)。
ご依頼のきっかけは「就職活動向けの動画を作りたい」でしたが、社長さんが本当に望んでいたのは、それを社内の文化として根付かせることでした。外注して1本作って終わり、では意味がない。
そこで、編集のデモンストレーションまで含めてお伝えしました。終わったあと、参加された方から「分かりやすかった」と言っていただけました。そして何より、社内の情報を自分たちで更新していく、という素養が生まれた。これがいちばんの成果だと思っています。
動画もAIも、構造は同じです。外から入れて終わりにするか、社内に溜まる形にするか。
個別に教えてきた方たちの話
私たちは、VibeCording・AIチャットボット活用の個別指導を5名以上の方に行ってきました。そのうちの1名の方は、そこから約1000万円の売上につながったと伺っています。
ここで正直に言いますと、この方が特別だったわけではありません。共通していたのは、自分の商売を自分の言葉で説明できたことです。AIに教えられる材料を、もともと持っていた。
だから私たちは、「AIに詳しくないから無理です」とおっしゃる社長さんに、いつも同じことを申し上げます。自分の会社の話を1日語れるなら、それで十分です。
団体さん向けの講義でも同じ
商店会や業界団体の皆さんに、SNSショート動画の作り方をお伝えしてきました。撮影だけになりがちなところを、「企画・撮影・編集」の3つで考える、という話を中心にしています。
順番を持っておくと、一人でも回せるようになる。AIの話も、まったく同じ構造です。
いくらかかるのか(値札を出します)
私たちは、値段を「お問い合わせください」で濁さないことにしています。何をいくらで頼めるか分からないことが、いちばん相談を遠ざけるからです。実際、知り合いの経営者が都内のコンサルタントに月10万円を払えるのに、私たちには頼めなかったことがあります。実力の問題ではなく、値札がなかったからでした。
いま出せる値札を並べます。
まず、0円でできること
会社の決めごとを文字にする作業は、自社でできます。お金はかかりません。 必要なのはメモ帳と、社長の時間だけです。
順番だけ書いておきます。①よく聞かれる質問を10個書き出す ②それぞれの答えを、いつも口で説明している言葉のまま書く ③やってはいけないことを5つ書く。これだけで、AIに読ませる最初の教科書になります。
本気で勧めています。ここを他人にやらせると、その会社らしさが抜けます。
個別サポート:1時間 16,500円
「書き出したけれど、これで合っているか見てほしい」というときに使っていただく枠です。実際に画面を見ながら、その場で直します。
内訳を正直に書きます。1時間16,500円ですが、移動を含めると私たちは3時間拘束されます。実質の時給は5,500円ほどです。安く見せるための数字ではなく、なぜこの値段なのかを分かって払っていただきたいので書いています。
AI顧問:年20万円(月◯回の枠つき)
継続して相談したい方向けです。必ず「月に何回」という枠を決めてお受けします。使い放題にはしません。
理由は正直に書きます。以前、私たちは誠実に一人ひとりへ無料で向き合い続けた結果、売上がゼロの月が何度もありました。 「いい人」のまま会社が潰れかけたのです。潰れたら、相談できる相手そのものがいなくなる。だから枠を決めます。線を引くのも誠実さのうちだと考えています。
ExpertSYS(AI技トレ):660,000円(保守契約は2年目より月5万円)
社内の知識をFAQの形で溜めて、AIが答えを引き出せるようにするシステムです。文章だけでなく、映像で部分的に教えることもできます。音声入力にも対応しています。
大事なのは、完全にAI任せではないことです。人が決めた答えをナレッジから引き出す形なので、間違いが起きにくい。そして間違いを見つけたら、スタッフの方が自分で直せます。 直すたびに精度が上がっていきます。
技能承継、機械の使い方マニュアル、就業関係の資料、お客さま対応。「ベテランの頭の中にしかない」ものがある会社に向いています。
無料AI講習会(毎月・0円)
毎月、無料のAI講習会を開いています。年間のテーマが決まっていて、たとえば10月は「会社の知識をAIに覚えさせる(知識蒸留入門)」です。この記事に書いたことを、実際に手を動かしながらお話しします。
無料なのは、集客の作戦だからではありません。まず知ってもらうのが先だと思っているからです。一対多なので時間が枠に守られていて、無料でも私たちが潰れません。
補助金について、正直に書きます
「補助金は使えますか」とよく聞かれます。
私たちは補助金の専門家(社会保険労務士や中小企業診断士)ではないので、判定はしません。 要件は毎年、公募回ごとに変わりますし、対象になるかどうかは会社ごとに違います。「この補助金が使えます」と言い切る人がいたら、少し慎重になったほうがいいと思います。
言えるのはここまでです。AIツールの導入が補助金の対象になりうるケースはあります。 ExpertSYSのような売り切りのシステムは、比較的話がしやすい形です。
ただし、金額も要件も締切も、必ず公募要領でご確認ください。 私たちにできるのは、一緒に調べて、必要なら専門家におつなぎすることまでです。それ以上は言いません。
順番をもう一度、短く
長くなったので、まとめます。
最初の10回はうまくいかないと知っておく。1回で結論を出さない
会社の決めごとを文字にする。これは0円で、社長にしかできない
赤を入れたら、なぜ直したかを1行書き足す。1回の直しが資産になる
溜める場所を、人ではなくファイルにする。人が抜けても残る
分からないところだけ、外に聞く
外部の専門家が要らない、という話ではありません。順番が逆だと言いたいのです。先に外に丸投げすると、いつまでも社内に何も溜まりません。
最後に
私たちは映像制作を20年以上やってきた会社です。ずっと、経営者の方の話を聞いて、それを形にする仕事をしてきました。撮影の前には必ず「どんな会社にしたいんですか」と伺います。
その仕事の中身は、AIの時代になってもほとんど変わっていません。社長の頭の中にあるものを引き出して、外から見える形にする。 相手が視聴者からAIに変わっただけです。
だから私たちは、自分たちを「AIの会社」だとは思っていません。伝えるプロが、相談相手として、AIで中小企業の困りごとを一緒に片づける会社です。
冒頭の「何かあったとき、誰に聞けばいいんですか」という問いに、最後にお答えします。
まず社内に溜めてください。そのうえで、それでも分からないところは、私たちに聞いてください。
越谷でAIの話ができる相手がいなくてお困りでしたら、いつでもご相談ください。毎月の無料講習会に来ていただくだけでも構いません。売り込みはしませんので、手ぶらでお越しください。




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